事故現場に程近い「つなぎ温泉」にあるガソリンスタンドでの事。
陽もとっぷりと暮れたころ、若いカップルが乗る一台の乗用車が給油に立ち寄った。
「レギュラー満タンで。」
男は言った。
注文を受けた従業員は、てきぱきと動き給油口に給油ノズルを差し込み、給油を開始した。
男はしばらくその様子をドアミラーで見ていたが、助手席の女と中断した会話を続けたようだった。
しかし、運転席のウィンドウをコツコツ叩く音がそれを遮った。
ああそうか、灰皿か・・・、と思い男はウィンドウを下ろすと従業員が予想外のことを聞いてきた。
「お客さん、慰霊の森に立ち寄りました?」
なぜこんなことを聞くのだろう、と不審に思いつつ男は答えた。
「ああ、確かに立ち寄ったけど、それがどうかした?」
慰霊の森の駐車場は、昼はもとより夜ともなるとまったく人気のない場所なので、若いカップルが立ち寄る理由など容易に想像がつくというもの。
すると従業員は言った。
「ちょっと車を降りて車体を見てみませんか?」
従業員はそう言って二人を促した。
男は助手席の女としばし目を合わせ、不審に思いながらも共に車を降り従業員のいるところに歩み寄った。
「ほら、これ見て御覧なさい。」
従業員は車体を指差しながら言った。
それを見た二人は凍りついた。
そこには折り重なるように無数の手形がついていた。